地域研修in花巻

初期研修期間中には「地域病院研修」というのが1ヶ月間あり、地域に密着した医療をしてこいというのがあるのですが、「地域に密着した医療」・・・う〜ん、THE・これ!みたいな言葉が浮かぶ人はいるでしょうか。訪問診療や救急医療という言葉を当てはめても良いけれど、なぜそこに行き着くのかっていうことが抜けているので、やれ医療崩壊だ、診療報酬あげろ、新専門医制度だのというあまり中身の伴わない議論に終始しているようです。

個人的には「病気を診る」だけでもなく「人を診る」だけでもなく「地域を診る」ことも求められている時代になってきたのだと思います。私のいる岩手は面積が全国2位という広さの割に私立医学部が一つという状況のために医者の定着がない状態で、面積当たりの医師数も北海道に次いで全国ワースト2位です。患者さんは救急センターに来るのも一苦労なので、救急が大変というよりかは救急センターに来られない人・間に合わない人がそこそこいるような印象です。なので救急センターに来た患者さんをひたすらさばいていくというよりは、どのようにしたら患者さんが病気にならずに済むか・患者さんがうまく病気と付き合っていけるかなんてことを考えるのが「地域に密着した医療」ということなのかも知れません。

ということで私は岩手県花巻市に行って参りました。
花巻は野球が好きな人や温泉が好きな人は知っているかも。
ここです。

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花巻市の人口は
・2015年人口約10万人 (前年比-834人)
・65歳以上人口30.3%(全国平均26.6%)
・生産年齢人口57.5%(全国平均60.7%)
・15歳未満人口12.1%(全国平均12.7%)
・2013年転出人数2394人 転入2264人 (-130人)
・・・・高齢化は進んでいるものの思いのほか社会的な人口流出が少ない。

花巻市の産業は
・2011年市内純生産額約2200億円(6年間で-11%)
・2011年1人当たりの所得223万円(6年間で+3%)
・2010年農家数6772戸(6年間で-14%)
・2012年卸売・小売業の従業者数5857人(3年間で-31%)
・2009年観光客数217万人(昨年比-1.4%)
・・・・産業は観光と医療を除いて近々壊滅する予感。あと観光客をどのように統計をとっているのかはわからないが温泉郷や宮沢賢治関連施設やスキー場などの来訪者を累計しているようなのでおそらく実質半分くらいだと思われる。

ちなみに花巻市の医療は
・2010年医療・福祉従事者数5218人(5年間で8%増)
・2013年救急車出動件数3841件(3年間で+19%)
・・・本題ではないので深く突っ込まないが高齢化すればそりゃ医療は高くつく。ただし国からの保険金が地方に分配されるイメージ。

仕上げに財務諸表

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これでは大雑把でしかわかりませんが、そこまで悪くなさそうだけど国からの補助金なくしたら消滅しそうです。

これで大体の花巻市の基本が掴めました。細胞の数は変わらないけれども新陳代謝が進まず時間と共に自分の足腰で立てなくなってくるイメージでしょうか。国という杖がもろくなるとバタンとなりそうです。

老い先短いような印象ですが、老いと共に生きるということが出来ると1ヶ月花巻にいて私は思いました。その根拠となる魅力を3つ挙げたいと思います。

魅力① 温泉(+雪景色)
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花巻はなんといっても温泉です。後述しますが花巻市内には幾つもの質の良い温泉施設があります。しかも私みたいな南から来た者にとっては雪を見ながら湯に浸かるなんてなんて日本人らしいのだと感動しました。

魅力② 新幹線(+高速道路)
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花巻には新幹線が通っています。東京駅まで新幹線に乗って2時間40分で行けます。しかも前もって予約しておけば1万円かかりません。2月の間に2回ほど東京行きましたが楽すぎて泣きそうでした。また高速道路も発達しているため近傍の地域に行くのもひょいひょいと行けました。

魅力③ 空港
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花巻にはまさかの空港があります。1日1便ではありますが福岡〜花巻が繋がっています。便利を通り越して驚愕です。ただ最近は嫌なニュースも流れました。「64地方空港の「赤字額」155億円超 平成25年度 毎年税金で巨額赤字を穴埋め」この記事をよく見ると花巻空港がダントツで17億円の赤字を出していることに気づきます。新幹線も高速道路もあるとそうなるのも頷けますが。

大体この流れで何を言うか読めてきたと思いますが、そうです、花巻市が回復する戦略はこれです。

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アジアの観光客を温泉と東京で楽しませる大作戦です。・・・大作戦ですよ?

ちょっと前までの中国人の爆買いは収束を見せていますが、アジア圏の他の国々の成長は止まりません。アジア人富裕層は増え続けますが彼らは東京で一流の商品を買いたいのと同時に日本の一流のサービスを経験したいと考えるようになります。そこを狙います。静岡空港がこれと同様のことをして成功していますが、彼らには富士山があるように、私たちには雪の温泉があります。LCCの誘致や花巻東京ツアーを仕掛けたりなど、市を挙げて取り組むことができれば花巻はアジアに誇る名所となりそうですがこのようなことを考えるとこの人のことが頭に浮かびます。公務員の方は必読です。私も読みました。医者ですけど。いうてもこのようなことをできる人はなかなかいないと思いますので、花巻空港を民営化すればそういう儲かることは必ず仕掛けてくるのでオススメです。儲かるっていうのは儲けた人も幸せですし、税金を納めるので行政・福祉・医療サービスを受けられる人も増えるということで幸せが連鎖しますからね。他人を直接的にも間接的にも幸せにする金持ちは尊敬します。

ということで私の地域研修で学んだことは以上です。地域を学ぶことは楽しいと感じてもらえたら幸いです。あとは私が1ヶ月で行った花巻温泉ランキングなので暇な人だけおつきあいください。それでは。

花巻温泉ホテル千秋閣 ☆☆ 800円
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地下にある広~い普通の銭湯。その一角ではリンゴがぷかぷか浮いており心地よい香りに包まれる。

大沢温泉自炊部 ☆☆☆☆ 食事込み1000円
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雰囲気漂う大沢温泉の一角にある。良心的な価格とは思えないほど立派な旅館で、露天風呂では白銀に包まれた豊沢川を眺めることができる。シャワーなどが別の浴場になってしまうためマイナス☆。露天風呂はまさかの混浴であり、少しドキドキしたが、案の定バーバが数匹いらっしゃったぐらいであった。

山の神温泉優香苑 ☆☆☆☆☆ 700円(食事込み1300円)
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粉雪が舞う山奥に構えられた荘厳な旅館に少し驚きながらも、一度その開放的な露天風呂に浸かってしまうと、時を忘れてくつろいでいられる優しさに包まれる。アルカリ性単純温泉であり、心だけでなく体の表面もトロトロになっていく。冬季限定で250円でサービスされる柚子サイダーはとても美味しい。また昼に行くとランチ付き1300円で立派な食事にありつける。

鉛温泉藤三旅館 ☆☆☆☆ 700円
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小さいけれども白銀で化粧された川を望む露天風呂は開放的で、ゆっくりできる。すぐそばに藤三旅館名物の「白猿の湯」がある。面積は小さいが、日本で一番深い温泉とあり、立ちながら湯に浸かることができる。混浴だが入った時は白猿と見紛うジージがくつろいでおられた。

志戸平温泉ホテル志戸平☆☆☆☆☆ 864円(食事込み1080円)
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「天河の湯」という名の如く、透明な湯が幅広く奥深くまで続いている。全面ガラス張りで臨場感があり、多くの客人を招いても平然としているだろう。露天風呂も併設してあり、岩壁に張り付く苔のような雪も味わい深いが、この日は吹きつける雪もあり、ついうっかり「winter again」を口ずさんでしまった。「日高見」の湯では様々な湯船が用意されて楽しめる作り。+216円で食べられる定食もおいしい。

大沢温泉菊水館 ☆☆☆ 600円
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こじんまりとした木造りの露天風呂。紹介の写真とは異なり、開放的にしておらずガラス窓で覆われていてもはや露天風呂ではないがその窓には「女性タイムの覗きはしないで」とあるように川を挟んで向かいにある大沢温泉自炊部に配慮したのだろうと思われる。その分浴室には木の香りが充満しているが、4人以上入ると狭く感じてしまう。

花巻温泉 佳松園 ☆☆☆☆☆ 日帰り入浴なし
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天皇陛下もご宿泊されたという気品の高い宿。廊下を歩くのも中庭の日本庭園を望みながら土地の歴史ある調度品が出迎えてくれる。湯船は広いわけではなく、質素な贅という表現がピタリと当てはまる。雪景色も悪くはないが秋の紅葉が一番のベストシーズンだろう。ちなみに部屋にも木造りの浴槽がある。

松倉温泉 風の季 ☆☆☆☆+α 600円(食事込み1300円)
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新しい旅館でモダンな雰囲気を醸し出している。風呂は内風呂、外風呂、露天風呂という3段構えで柔らかい雪が裸の木々をコーティングしている様を楽しめる。やり手の経営者のような感じでもしこの旅館が都市部の近くにあれば流行っていたのだろうなという印象を受けるが、新しいが故に細かな配慮(石鹸、トイレの匂い、下駄箱など)がやや欠けているのが惜しいところ。

メディカルスパ花巻トロン ☆
朝(1200円)昼(1000円)夕(600円)~23時
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「強力な活性化作用を持つトロン温浴水により、免疫調整機能や抗酸化機能の増進が科学的にて証明された温浴施設です」としているが、実際に普通の温泉浴とどう違うのかのデータは見つけられなかった。浴槽は狭く古く。浴室はちょっとしたサウナのような感覚で特殊な匂いがする。仮に科学的が事実であったとしてもせめて浴室内を綺麗に快適にして、体に良さそうと思い込ませて欲しい。

渡り温泉 ホテルさつき ☆☆☆☆
600円(日専連などのカードの提示で500円に)
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何気ない気持ちで行ったが、想定以上に快適なホテル・風呂であった。着替えも開放的に広く、浴室、露天風呂もさりげなくちゃんとしている。露天風呂からは山並みを鑑賞する事が出来、いつの間にか心が羽ばたいていた。価格もリーズナブルでツアーを組むのにちょうど良さそうだ。

台温泉 精華の湯 ☆☆+☆☆ 500円
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アッツアッツのお湯が体に染み渡る。狭い浴槽だがその昔ながらの温泉に心が和む。お湯から上がると同じ敷地内に美味しい蕎麦で有名な「かみや」で冷えっ冷えのお蕎麦を堪能できる。「かみや」は昼しかやってないので昼に来るならこのコースがおすすめ。ちなみに台温泉では「台子のきもち」という甘酒を餡に仕立てあげたお餅があり、温かいお蕎麦にドボンと入れて頂くのも一興である。

花巻温泉 ホテル花巻 ☆☆☆ 800円
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普通の広い石造りの浴槽に加えて木造りの露天風呂があるがそこから眺められる景色は少し微妙。また、露天風呂は木造りの浴槽で、首をかけて足を伸ばしているのがちょうど良い感じなのだが、頭部分が木ではなく、石というのも微妙であった。もう一つ工夫が加われば良くなりそうだがそれは経営者次第だろう。

花巻温泉 ホテル紅葉館 ☆☆☆☆ 800円
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浴槽は広く、のびのびできる。グループで行ってもあちこちで話が弾みそうである。露天風呂も湖のような作りで木造りの傘状の屋根の重なりも美しく、湖面を這う煙も温泉の情緒をかき立てる。

台温泉観光荘 ☆☆☆ 400円
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昔の風情漂う台温泉を代表する旅館。良心的な値段でもあり、地元民に愛されていそうである。浴槽は木造りで狭いのだが、そこからさらに木板で「あつい」「ぬるい」に仕切られている。「ぬるい」ほうに所狭しと男5人が入浴してたので「あつい」湯に入ろうとして片足入れたら激アツですぐに足を引っ込めてぎゅうぎゅうの「ぬるい」湯に入れてもらった。火傷するかと思った。ちなみに「ぬるい」湯もかなり熱い。

新鉛温泉 愛隣館 ☆☆☆☆
800円/(日専連などのカード提示で650円に)
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鉛温泉よりももっとも山奥にあるどことなくラブホテルを思わせる旅館。火曜サスペンスの舞台ともなったそうで、火サス製作者も良いところに目をつけたなと感心した。風呂は広く、露天にある満天の湯は130cmの深さがあり、白猿の湯を彷彿させる。入っていたのはジージではなく、宴会前のオッサンだった。飲水泉もあるが新「鉛」温泉の由来は金鉱を鉛と偽って脱税したことが由来なので鉛は入ってないので安心だ。

※写真はネット上から拝借しました。