地方での初期研修について

大学生の次の段階は大多数が初期研修医となります。
どこで初期研修期間を過ごすかはそれぞれの自由となりますが
多くの学生が都市部を選ぶ傾向が強いようです。私も大都市ではないですが都市部を選びました。都市部であったほうが、モノ・ヒト・サービスへのアクセスが良いためであり、2年間の給与や時間の使い方にかなりの差が現れると感じたからです。それでも一方では地方でも研修したいという思いはありました。
地方には都市部にはない地方の持つ良さがあり、「色」を感じさせてくれる地域は自分の人生を彩るヒントを教えてくれます。ということで研修先選びの時にも地方で研修ができるというのも一つの観点でした。私の研修先では3ヶ月間だけ宮城県気仙沼市にて救急研修することが出来たので、地方の研修についても書き残しておこうと思います。

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1:宮城県気仙沼市について
2011年3月11日の被災地域として一躍有名になった。被災前は世界3大漁場の一つとして名高い三陸沖の拠点漁港の一つの気仙沼漁港を持つ。震災により、漁港は壊滅し、市の主要産業機能を一時失うものの、多くの復興支援を得ながら、市は復興しつつある。しかし若者が市外に流出する傾向に歯止めがかからず、今後は復興予算に頼るやり方ではない手法でいかにこの世界的にも恵まれた漁業関連産業を潤わせ、若者たちの雇用を創出していくかが復興の鍵になるだろう。

2:気仙沼市立病院での研修について
九州大学に通う学生にとってこの地域はかなり縁遠い存在かもしれない。ただ、この地域に思いを馳せる機会が6年生には何度かある。6年生は学生係からマッチング申し込みについて何度かあると思うが、実は以前の6年生の中に一人だけまさかのマッチング申し込みを忘れた人がいた。その事件以降、今は学生係から何度も申し込み確認をされるようになったわけだが、その人が最終的に行き着いた病院がこの気仙沼市立病院である。当時こそ、この病院は定員割れが続いていたが、私が研修している時は1年目は4人いて、来季がフルマッチという結果となっている。私自身、研修は楽しかったしこの結果は偶然ではなく納得の結果だと思う。

救急では市の唯一の大きな総合病院ということで、軽症から大物までやってくる。自分で診断するだけでも、だいぶ診療に対して自信がつく。また、ここで従事する先生方は本当に優しい方が多く、わからない症例に対してはすぐに上の先生や、専門の先生にコンサルトできるというのも嬉しかった。また医局では、定期的に釣り好きの先生が釣ってきたタラの鍋や白子などを振舞ってくれて新鮮な魚介類はとても美味しいことを知ることになった。

3:気仙沼の食文化について
気仙沼に3ヶ月という間だが滞在中に感じたことは気仙沼には仙台とは違う食文化が発達しているように感じた。一度もきたことはないのだがなぜか懐かしいような感覚に浸かってしまう。多くの人が陸の孤島とも呼ばれるこの気仙沼の復興を願う理由の一つではないだろうか。まずは寿司屋から紹介したい。

4:気仙沼の寿司屋
気仙沼のその世界に誇る水揚高を象徴するかのように、多くの寿司屋が存在する。震災以降、その数は半減したそうだが、それでもその数はコンビニの数よりもずっと多いようである。また新鮮な寿司を特上で頼んでもおよそ3000円とかなりリーズナブルである。個人的なオススメは水揚高日本一のメカジキ。冬の時期に行く人は是非。(寿司屋の写真はネットから拝借しました)

泰平寿司
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病院官舎の近くに立地しており、その門構えは数ある寿司屋の中でも立派ですぐに探しだせるだろう。カウンターに座ると気さくな主人が色々と話してくれる。寿司を食べたあと、デザートが食べたいとゴネたらたまたまあった柿を出してくれた。

ゆう寿司
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病院下りてすぐにある、病院御用達の寿司屋。昼時は入れないが昼過ぎや夕方は入れて、カウンターに座ると、主人が気仙沼でフカヒレが発達している理由や、サンマの水揚高が鈍っている理由など色々と話してくれる。また寿司だけでなくカキ鍋などのメニューもあるため、見学生が来たときも重宝する。写真はフカヒレ寿司。

大寿司
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まさかの巨大チェーン店カッパ寿司と隣接する寿司屋。寿司のネタがどこよりも大きくどこよりも安い。主人や女将さんとしゃべりながら色々食べたが、2000円代で収まり、となりのカッパ寿司よりもずっと美味しくてずっと安いんじゃないかな。

巴鮨
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泰平寿司の近くにあり大通りに面する立地であるが、その立地に似合わず、とてもアットホームな接客をしてくれる。ほとんど喋る前から医者だって見抜かれてしまったあたり、油断ならない。またお寿司以外にも家庭料理のようなものを一緒に出してくれて温かい気持ちになる。

寿司智
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さいつも寿司屋を訪れると「特上」を頼むわけだが、ここでは更に+1000円ぐらいの「店主おまかせ」なるもの(正確な名前は覚えていない)があったので、頼んでみたが、普通に美味しい寿司を食べたい場合は店主にまかせない方がいいかもしれない。めずらしいものを入れてくれるが、ぶっちゃけあわびの寿司など美味しいもんではないと思うのだが。。。またここには他店にはない「フカヒレの茶碗蒸し」なるものがあり、これは珍しくかつ美味しかった。

いちば寿司
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最近できたという回転寿し屋さん。内装は田舎とは思えないほどお洒落でキチンとしてあり、回転寿しとあってかなりリーズナブル。タッチパネルで注文できるのも現代風。ただ、味に関してはカウンター式のお寿司やさんにはやはり遠く及ばない感じがしたのは寿司屋さんを廻って舌が肥えたせいだろうか。

寿司処 一心
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この店は高台にあり津波の被害から逃れたお店。創業35年の歴史を感じさせる風格があり、カウンターに並ぶ包丁や日本刀にはすこしビビってしまった。その握りもさることながら、サービスで出してくれるエビの頭の味噌汁は味わい深い。

新富寿司
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すこしわかりづらいところにあり、場所がわからないと電話したら女将さんが迎えにきてくれた。一貫一貫は小ぶりなものの、質の良いものを厳選してくれているような印象だった。カウンターの主人は復興に情熱を燃やしているようでその話が長くさえなければ本当に美味しいお寿司だと思う。

5:気仙沼の飲食店について
前述したように気仙沼には独自の食文化が発達しているようで、お店での食事は一つの楽しみだった。たった3ヶ月のあいだで全てをまわりきれたわけでは全然ないが特にここはオススメしたいところを紹介したい。


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病院近くの仮設住宅の一角に存在する。新鮮な海鮮から鍋と幅広くあるが一人で入った時には定食もあるなど、嬉しいメニューをそろえてくれている。飲みすぎたときは栄養ドリンクをくれる温かい女将さんが色々と欲しいものを勧めてくれる。イチオシは気仙沼名物メカジキのハーモニカ。

瑠衣
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病院の裏にあり、全国各地の美味しいお酒を豊富に揃えてくれていて格安で提供してくれているなんとも嬉しいお店。オーナーもきさくで色々な要望に応えてくれる。オーナーは多分ゲイだと思う。もう一度気仙沼に寄ることがあれば一番最初に行きたいお店。

福よし
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漫画「美味しんぼ」にも掲載され、「世界一の焼き魚」として評されたお店。その後テレビメディアでも続々と特集され気仙沼の中では一番有名なお店ではないだろうか。なるほど、その焼き魚はとても美味しく、気仙沼に来たら一度は行っておきたいお店なのは間違いない。

K-port
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俳優、渡辺謙が気仙沼の復興のために作ったカフェ。詳細はhttp://www.k-port.org/に詳しい。内装もお洒落で食事も美味しい。個人的なオススメはカレー。秋には秋らしいカレーが、冬には焼きカレーが提供される。渡辺謙自身もよく店で手伝っているところが目撃され、気仙沼の研修医も一緒に写真撮ってもらったとか。

6:気仙沼の食材でちょっと作ってみた。
やはり地域を知るには地域の食材を使って料理して味わうことが基本だと思う。私自身、自炊を始めたのが医者になってからで全然うまくはないが、そのぶん誰にでも出来るものを紹介できると思う。マジで。

ピリ辛ツナ入りお茶漬け。

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地元のスーパー「片浜屋」でしか売っていないという株式会社ミヤカンの「ピリ辛ツナ缶」でお茶漬けを作ってみた。通常のマグロ缶とは違いキハダマグロのおおぶりな身を使用したこのツナはとてもジューシーであり、お茶漬け以外にも、パスタに絡めるだけでも十分にイケる。ミヤカンは震災で一時県外に営業拠点を移したが、復興を受けて再び気仙沼に戻ってくるそうで是非頑張って欲しい。

マグロ丼
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k-portのお隣、磯屋水産では新鮮なマグロが短冊にて売られている。少しの量のくせに約4000円ほどしたが奮発して買ってみてマグロ丼にして食してみたが、これが家で食するものか、あまりの旨さに興奮が収まらなかった。短冊一つでマグロ丼が二人分作れたがそれ以上の価値がこのマグロにはあった。また買いに行きたい。

いかがでしたか。結構地方での研修も悪くないかなと思ってもらえたら嬉しいです。地方の色を感じてもらえたらと思います。