自分を3D造形してみた。


このあいだ休みを頂いて久々に福岡に帰りました。
離れている期間が長ければ長いほど福岡は良い街だなと思います。うまい店が多いですしね。帰省時のささやかな楽しみは小汚いもつ鍋屋でちっちゃな同窓会をすることです。

ちなみに休みには九州大学に遊びに行っていました。ただ、医学部ではなく芸術工学部です。芸術工学部は九州大学の誇れる強みの一つだとは思いますが、医学部の学生にとってはあまり馴染みがないかもしれません。でも近い将来、きっと距離はグンッと近づいていくと思います。

例えばこれ

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私のmacの写真ですが、こうして個人のデバイスでMRIやCT画像をクルクル見ていくのは今の世代の学生さんにとっては普通とまではいかないまでもあまり抵抗がなかろうかと思います。

ただ、自分である程度好きなように画像が扱えると、今度は実物も見てみたいというのが人間の性ですよね。ということで行ってきました。

imgres九州大学芸術工学部に。(上の画像は拝借しました。綺麗ですね。)

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自分のCT、MRIデータを持ってカタカタと最適なstlファイル(3Dデータ用のファイル)になるように可愛がってあげます

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あとは細かなアーチファクトの部分をお化粧してあげます。女性の化粧の気持ちがわかるようなわからないような。

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これが今回使った3Dプリンター。石膏タイプですね。

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出力したのをそーっと取り上げて

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出てきた実物をさっさと固める。

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ジャーンと。自分の頭蓋骨と顔表面です。今回は石膏タイプだったので骨はかなりリアルに出来ました。

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後頭部って意外に骨分厚いなと再度認識。画像だけではあんまり気にならなかった部分も色々目に付きます。

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もちろん血管も作れます。ここにつながるんだっけな〜と言いながら迷っている自分の浅はかな理解を悲しみました。

というわけで今回は簡単な3D造形をしてみました。現状で3D造形に関して感じたことをまとめてみようと思います。

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・医学教育として面白いアプローチ
今までデータを送って作ってもらったことはあったが、それはそれでかなり初学者としては理解がしやすい。例えば、胆管癌の患者で胆管走行の変異型に対してどうアプローチするかというものに対しても、画像上で見るより手に持ってするというのははるかに議論として分かりやすいものがあった。
また、自分のデータを使って実際に自分でやってみるとまた違う景色が見える。3Dデータを作るには当たり前だが自分のCT・MRI画像と向き合わないといけない。他人と違う部分があるとこの機能は大丈夫なのかと文字通り他人事ではなくなるし、細かい点まで見たりその意味や機能を調べたりする。


・診療には用いづらい。
熟達した医師にとって診断するためには3D造形は必要としない。例えば先述の突然変異の胆管がんに関しても、画像上で議論が進められる。
強いて言えば肝切除術の途中で肝癌がどこにあるか術中エコーを用いるときがあるが、実物大の肝癌モデルがあればその一助とはなる(私のような初学者には大いなる一助)だろうがそれも(熟達した医師にとってみれば)エコーと術場のCT画像で補える。
患者さんへの説明には有用かもしれない。私達はCTやMRI画像を患者さんに見せながら説明するが、患者さんの中にはもう画像のことはわからないから医者に全部任せるといった反応が見られるが実際に実物に近い形で目にするで理解がしやすいと思われる。こんなに心臓大きくなってんだからとx−p見せるより3D造形物を見せたほうが醤油を飲むのをやめてくれそうな気もする。
ただ、やはり時間とコストがそれに見合わない。CTデータを最適に処理をするのに慣れた人でも小一時間かかるし、処理したデータから造形物が出来上がるのには大きさにもよるがおおよそ半日を要する。今回は石膏タイプだったが、樹脂タイプでも同様のはず。また一個作るのに数万円などかかる。今後樹脂が劇的に安くなったり、精度が極めて高い自動処理ソフトがあれば話は変わるが、現状を見る限り現在はそう気軽に作れるものではない。

・治療や研究でアウトブレイクの予感
今でもすでに3Dナビゲーションシステムや3D腹腔鏡など、多くの3Dを冠する治療が行われ始めているが、今後劇的なインパクトを与えると思われるのが3D造形の臓器移植。数年前から色々なところで試みられているけど、まだ未だどこもこれぞ!というのを出せていない。すごいやってみたいし、腎臓を作製できれば透析患者のQOLの向上も期待出来るし、医療経済としても最初の1〜2年は手術費用などでむしろ負担増だろうけど、健全な方向に向かうはず。ここからは個人的な妄想実験。「型」「機能」「維持」をクリアできれば臓器移植に持っていけそうな気がする。
「型」は標的臓器を生体素材で再現すること。培養で初めから肝臓や腎臓などを作るのは時間がかかりそうだし、ただあらかじめ型があればそこに細胞を流し込む形でまるで「修復」されるようにできるんじゃないかと。再生能のある肝臓はこれでうまくいきそうだけど腎臓じゃうまくいかなそうではあるけれど。
「機能」はさすがに3Dプリンタ単体では臓器機能の再現は難しそう。再生医療の得意分野のはず。細胞を型の上で培養するのか、予め培養された細胞群をプリンタのインクとして用いるか。再生医療は癌化するリスクがかなり高いため、ここも克服ポイントになりそう。
「維持」はここ数年、人工臓器ができた!という記事を見て、実際に移植成功の話を聞かないところからは、ここが最も難しい課題だと思われる。キーになるのは血管のはず。細胞を維持していけるだけの血管の再現は高スキャン性能かなと。ここで思い出すのが、学生の頃に卒試や国試の裏で、研究者の方のご協力のもとにヒトの腎臓サンプルで実験させて頂いていたあの機器を使えば…もしかしたらまともな腎臓が出来るかもしれないなぁなんてと妄想は止まらない・・・。

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今回のこともあって3Dプリンタでの臓器移植を検索していたら、色々出てきますね。その分野で功績を残されている方の記事がありました。

Engineering New Organs Using Our Own Living Cells

個人的にはブタの腎臓を特殊な洗剤を用いることで、ブタの細胞を全て洗い流して、型となるコラーゲンだけ形を残したままにし、その中に患者の細胞を蒔けば拒否反応しない腎臓の出来上がりとの手法は驚きました。まさかの展開ですが3Dプリンターに固執しないその発想はさすがですね。将来的にはどの作り方をした人工臓器を移植するか選べたりするかもしれませんが、2011年のこの方のTED動画にすでに人工腎臓が出てきますが、動画を見る限りではその時点ではまだ使えるレベルではなさそうなのでこれからの3Dプリント手法に期待ですね。

※今回は芸術工学部の先生方や大学生さんにご協力頂きました。ありがとうございました。

 

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