初期研修の「地方」と「都市」の比較(暫定版)


このサイトに訪れる人が徐々に増えていくにつれ
マッチングの日が近づいているのを感じます。

私が学生の頃もそうでしたが病院選びは難しいと思います。
「どこでやっても一緒」といういわば達観されたようなアドバイスや
「この病院がいいよ」など半ば自分の医局や病院の勧誘に近いアドバイスが錯綜し
学生にとってはあまり良い判断材料は少なかったように思います。

というのもそういうアドバイスを頂いた先生が実際に初期研修医として研修されてない場合や、されたとしても「単一病院での」初期研修しかされたことがなく、ただの思い込みでアドバイスされているようでした。

私も初期研修開始前までは「初期研修は(市中病院ならば)どこでやっても(身につけられる技能・知識は)本人次第であって大差ないはず」と思い込んでいましたが、
奇しくも私は二つの市中病院で初期研修を受けることになり、これは大きな誤りだったなと感じています。

最初の病院を辞める時の経緯があったにせよ、私としては前の病院で関わって頂いた多くの先生方に感謝をしていますし、なにより読んでいる方の参考になるように出来るだけフェアな視点で比較していこうと思います。今の病院が3ヶ月ちょいで前の病院が9ヶ月(と気仙沼の病院に3ヶ月)ですが、なるべく研修した科での偏りもないよういた期間を平均して、また周囲の1年生や2年生の様子も加味して比較していきます。始まり始まり〜

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前の病院をA、今いる病院をBとする。
A病院は100万人規模の都市の中心部にある、限られた数科に特化し、症例数を多く集める病院。
B病院はよくある地方の総合病院のひとつ。で、概略は以下の通り。

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Bは精神科の病院が隣接(というより繋がっている)している。
研修医数はA病院では私ともう一人がやめたので-2、B病院は私が入ったので+1。
A病院はいつもおおよそ満床。検査や手術の優れた施設で入院患者が多いのと共に、患者の入退院の時期は患者さんの意向より各階の看護師長のマネージメントが反映される印象。また救急外来では極軽症の患者も病院の方針としてナースステーション横付けで入院などにより満床を超えていた。(今は医師数の減少などにより、入院数が減ったよう)
B病院はのほほんとしたようで患者の意向に沿うように入退院する。空室もちらほらある。
外来患者数としてはB病院の方が標榜科数が多いゆえに必然だとは思うが、救急外来でも多くの軽症の患者が来院して帰宅している。

次は多くの研修医が気にするところの労働実態・研修環境。
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Aについて
基本的にAでは労働という労働はあまりない。朝のカンファや回診のあとは心カテの介助や、ERCPの介助などの医師免許をあまり必要としないこと(個人的にはこういった下働き的なものも治療機器やシステムの理解がすすむという意味で好きだったけど、さすがにブロンコの唾取りを延々とするのは地獄だった)が多く、基本的には後期研修医の先生方に仕事が集中し、いわゆる初期研修医の仕事はほぼない。それゆえに上の先生が多忙のあまりにピリピリされていることが多い。(最初のオーベンの話は極端でAの周囲の先生方も認めるようにその人だけ人間性があまりに未熟すぎて取り上げるのはAにとってフェアでなくなるが)最初の頃は何か診療的なことを聞くと罵られることも多く結局は全然勉強にならなかった(注1)。当直ですら見学で何かすることといえば心カテになった際の介助ぐらい。いわば夜起きる練習に近い意味合いだった。
ただ、休みはしっかりとある。診療終了後は研修医のオンコールはないし休日の朝は回診するぐらいだったけど、学習してるわけでも有意義な仕事をしてるわけでもなく何をしているんだろうかというモヤモヤ感は常にあり精神的なストレスはあまり解消されなかった。(A病院の研修医担当の先生にこの病院は病院の体裁を整える以外に研修医を必要としないのではないか?と問い合わせたが曖昧な返事しか返ってこなかった。)
良いこともあった。症例数が多く集まるということや、先生方の人柄もあって麻酔科では自分のできるギリギリの範囲ぐらいまでの仕事を教えて頂いたりさせて頂いたりしたし、消化器の先生の中に先進的なことに取り組まれている方もいて、自分の得意な分野で関わらせていただいたのはとても楽しかった。また時間が経つにつれ気をかけて色々教えて下さる先生もいらして徐々にストレスが和らぐようになった。
最後の方で気づいたのだが、例えば外から帰ってきた先生は最初は私に対してつらく当たったりするが、その先生の上司にあたる先生と冗談交じりの会話をその方の前でしたりすると私に対して対応が変わったりと、もしかするとそういう意味でのヒエラルキー構造が病院の文化としてあったのかもしれないと思いつつ、鈍感な自分を反省しつつ、それでも温かく接して頂いた多くの先生方に感謝しA病院での研修を終えた。

(注1)例えばプロカルシトニンは敗血症を疑った時によく測りますか?と何気なく聞けば、本当に国試受かったの?本読んでるの?医者失格だろ!とナースステーションで大声で罵られたりすることが度々あった。途中までどのような人であれ尊敬すべきところがあるのだから上に対しては敬意をもって接しようとどんなに理不尽であっても頭を下げてみたが、上に媚びて下にだけ強く接する姿や、周りの医療スタッフへの非人道的な行いや、なんでもわかっているように周囲にみせる割には心電図すら実はよくわかってなかったり、途中で病院のシステムについて聞いているのに「君の得意なiPadでどうにかすればいいじゃない!」とか「俺が偉いの?君が偉いの?!」とかい言いだしたあたりで来て1ヶ月ちょいだったが、オーベンといえどさすがに関わりを持たない方がいいなと判断した。離れた土地に来てそうそうこれだったために東北はヤバイんじゃないかという誤解が解けるまでに結構時間がかかった。あとあとになってこの方は教育に熱心だが、自分で出来ていなかった時代を忘れていたり、自分を実力以上に大きくみせようとしているコンプレックスにまみれていたりピリピリした時に周囲に当たってしまう幼さが残ったまま(30代後半ぐらいだったけど)だけだったのかもしれないと思いつつ、一定の距離を置こうという意思は変わらなかった。

Bについて
こちらは逆に労働時間が長いようである。その理由はオンコールと当直が主。オンコールという制度をこちらに移って初めて知った。病棟からかかってくる電話に対して答えたり、オーダーを出したり。最初は戸惑って、(A病院でも良心的な指導医の先生に指摘されていたが)入院患者の理解度がいまいちだと痛感した。が大体半月ぐらいすればコツが掴めてきた。実際に責任を持たされてやってみると、飛躍的にモノが見えてくるし、改善して、また改善してという作業が楽しい(無責任に楽しいと言っているのはわからない時に遠慮なく上の先生に相談できるという環境が大きいと思う)。カンファも少人数なので、ケースに応じて細かい質問ができるのはとても有り難い。B病院の特性か地方の特性なのか、上の先生がとても温かく、医局にいるのがとても楽しいとさえ感じる。よく病院選びに「雰囲気が良い」というのがランクインされるが「上の先生に気兼ねせずに聞くことができる(下を育てようとしてくれている)」というのが最も大きく寄与しているようだ。
こちらにくる前は、忙しいよ〜という触れ込みだったが、用事のある土日などは積極的に休みを与えてもらえるし、オンコールで夜中呼び出された時は翌日さりげなく研修医室で眠らせてもらえるので体力的にもあまりきつくないし、自分もやりきったーと精神的にスカっとして眠れるのは非常に嬉しい。個人的には20代では体力的ストレスよりも精神的ストレスの方がQOLに大きく寄与すると思う。(逆に産婦人科の時は自分が何していいかよくわからず、出来ることもろくにないとなった時は結構ストレスがあった、先生方は優しく色々とさせて頂いたけれど)
また当直も刺激的で楽しい(少し語弊があるかもしれない。重症でどうしようもない患者さんなどは辛い結果になったりするので)。基本的に救急外来でいろんな患者さんを「自分で」診る。問診とって検査のオーダーなどを出したり記事を書いたりするのは面倒な部分も多いけれども、自分の予想が当たる、外れるという感覚は(不謹慎ではあるが)危機感を持ちつつも楽しい。他病院で見逃されてたdisectionを見つけたりすると(勿論その方にとってはあれだけど)ビンゴ♪とか思ってしまう。勿論、悩ましい症例に対して上の先生に相談出来るというのがストレスフリーな所以。しかも自分で帰すという判断には責任を持つため反省することがあったりする。平気そうな顔した子供の一時間持続する腹痛で、腹部軟・グル音+・右〜左の上腹部全般の間欠的な自発痛、圧痛で腹膜刺激症状なしでx−pで圧痛部位に沿う形で大腸ガス貯留していたniveau(-)。排ガス+排便+。ちょっとお腹の調子が悪いけれども時間とともによくなりますよ〜。よくならなかったら開業医さんに〜。とか言って帰した人が痛みがよくならずそれから開業医に数回行っても同様の診断で、それでもよくならず、もう一度24時間後に救急外来にきて造影CT撮ったら、アッペが・・・。なんてこともあって、せめてアッペの可能性があるから症状続くなら救急外来にと一言言っておけば痛い時間が短くて済ませられたのになという反省もずうんとくるものがあった。
そういったこともあり、各研修医がそれぞれ困った場面などに遭遇するため、勉強会が盛り上がることが多々ある。自分はこうだった、こうすれば良かったと見栄を張らないで救急の先生を交えてケーススタディ出来るのは有り難いし、楽しい。
「手ほどきしてもらう」→「バックアップありの中で診療できる」→「フィードバック」という流れがあるというのはあまり注目されないが初期研修医にとっては一番嬉しいと思うのだがどうだろう。しかもそれでいて給料が倍なのだから、働き甲斐もあるし、自分への投資が一層しやすい環境にある。

(コラム)
これを書くとまたフェアではないようであるが、地方らしいなぁという経験があったので記しておく。病院中に入院中の方で難病で手を尽くしても、意識は常に朦朧としており日々衰弱の一途を辿る患者さんがいた。娘さんが日々健気に看病を続けていて、むしろ長い闘病生活の上では娘さんの方が疲れてしまうのでは気がかりだったが、もう容態もいよいよという時にその娘さんが、「一度だけでよいので実家で父が植えた桜を父に見せてあげられないか」とお話しがあった。通常はそのような話を受けたりはしないが、健気に毎日看病されていた娘さんの姿勢もあり、上の先生が了承し病院の車で送迎をすることにした。私ともう一人の先生が付き沿う形で出発した。容態がふらつきはしないかとはらはらしながらも家に到着。久々の主人の帰りに飼い犬が鳴き声を上げる。ずっと住んでいた家の一つ一つを娘さんが見せていく。でも肝心の桜の木は細い坂の下にありご家族と私たちだけでは危ないから見せるのは難しいとお伝えした。すると少し待ってほしいと言われ、暫くすると近所の方がちらほらと集まりだした。「久しぶりだな」「こんなんなって」と思い思いの言葉をかけながら10数人集まった。皆で患者さんのベッドを囲みながらそろりそろりと坂を下りきった。患者さんの頭上には患者さんが自分でが植えた桜がちょうど満開を迎えており、ご家族とご友人たちと少しの間だけ「花見」を楽しんで頂いた。その後病院に帰り、間も無くお亡くなりになられたけれども、ご家族・ご友人達と桜を見上げていた時に少しばかり目を潤わせていた姿がご自身が植えた桜のように誇らしく命を全うされたような感じに見えて未だに鮮明に覚えています。不謹慎な言い方になりますが、命の終え方としてとても見事だったような気がしました。(余談になるが、この後アドレナリンを病棟からパクったままにして師長にこっぴどく怒られた)

最後はQOLについての比較をしていく。

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おおよそQOLに関しては都市部と地方では都市部に軍配が上がる。ここらへんはかなり人によって好みがくっきり別れると思う。以下は完全に自分の嗜好なのであまり参考にはならないと思うが書いておく。
私は飲み会自体はあまり好きじゃないし自分で料理を覚えたいと思っていたので必然的に地方の方が合っていたし、高速のネット環境を敷いているので基本的には買い物に困らない。また大型テレビやそこそこ高級なソファやベッドも購入しているので家が広いとかなり快適で。また最近ちょっとしたワインセラーも買って益々快適モードになってきた(地方では給料が良いので家の中も色々投資ができて楽しいし快適)。ベランダも広く、最近家庭菜園でミニトマトを始めて、もはや恋人と会うことより、ミニトマトの成長を日々見ることの方がわくわくする。
車の所有も簡単で、高速道路がすぐ近くにあるので週末は温泉リゾート地や各名勝地などにすぐ行ける(別に都市でも車を所有しておけばすぐ行けるとは思うけれども、給与とかを考えると難しいかもしれない)し、行こうと思う環境である。
また予想外だったのはフットサルをやる環境に恵まれていたところ。かなりいい施設が近くに数カ所あって、またチームに恵まれて楽しい環境でできるのはびっくりした。というわけで現在はかなり楽しい。もちろん都市部にいた時はいた時で楽しかったわけだけど、違う楽しみがあって今は更に満足している。

(総括)
二つの病院が特に典型的な二つの形式の病院というわけではないですが、そこそこ参考になったと思います。おそらくニュアンスとしては自分の経験上、地方の病院の方がいいんじゃない的なニュアンスになってしまいましたが、都会にも良い病院はあると思いますし、A病院のような病院も心カテだけをガッツリやりたいとか、内視鏡だけをガッツリやりたいっていう人には勧められますし、B病院のような病院でさえも、ちょっと6年生のパートナーのいない女性にはあまりお勧めはできなかったり(偏見かもしれないがどうしても一般的な女医さんが結婚を意識するようなステータスを持つ男性の比率は地方では激減するし出会う機会も少ない。男性は婚期を気にしないのというのもあり相手のステータスもあまり関係なかったりでむしろ都合はいいんじゃないかとさえ思うけど)と人の事情も様々だと思いますので、今回はあまり公には話題とはされない(それが故に毎年似たような話がループされる)けれども、病院選びに重要になるであろう視点を取り上げてみました。是非、自分に似合う病院を探してみてください。(まだ全部の初期研修を終えたわけではないので暫定版としています)

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